短冊とぼくのけんか

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今日ぼくは短冊とけんかをした。
「短冊に書いたって、願いごとなんて叶わないよ」
そうこぼしたのを、短冊に聞かれてしまったのだ。
ぼくが短冊にえんぴつをむけると、すっかりへそを曲げた短冊は身をそらせて断固拒否の姿勢をとった。
仕方がないので、ぼくは短冊を家へ持ち帰ることにした。そうして毎日短冊の機嫌を直そうとやっきになった。そのうち、ぼくは短冊と仲よくなりたいと思うようになっていった。
七月六日の晩、ぼくは家の神棚に手を合わせて『短冊の機嫌がなおりますように』とお願いをした。
翌朝、短冊はそりかえっていなかった。
それは願ったとおりのはずなのに、ぼくは寂しい気持ちでいっぱいになった。
『短冊が元気になりますように』
願いながら無抵抗の短冊へそう書くと、短冊はあっというまに元気になって、ぴょんと胸をはってみせた。
ぼくは短冊に「ごめんね」とあやまってから、短冊と一緒になってそりかえって笑った。
ファンタジー
公開:18/05/19 07:53
更新:18/05/23 23:31

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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