レアバイト

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友人に頼まれて、一日バイトをする事になった。それは、三階ほどの高さから垂らされたロープを下で握っておくという、バイトだ。

「暗くなる前にはまた呼びに来る、トイレに行きたくなったら左手をピンと上げればその間だけ止めておいてくれるから」

その時点で質問が山ほどあったが、日当は2万円だという。もしかしたら騙されているのかもしれないとも思ったが、私はそのバイトを引き受ける事にした。

果たして、どこから垂れているかも不明なロープの先をただじっと握るという時間が始まった。開始すぐ「私、何やっているんだろう」という至極全うな感情が芽生えたが、何となく辺りが夕焼けじみてきた頃にはそのロープを「チャンス」と呼び絶対手放さない、などと言いながら割と楽しみだしていた。

しばらくして、友人が戻り約束通り報酬もくれた。結局何のバイトかは聞かなかった。駅までチャンスを握っていた時の感触を確かめながら歩いた。
公開:18/05/19 00:38

二十一 七月

にそいち なながつ

まずは100話お話を作るのが目標です。

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