願い石

2
134

幼い頃、おじいちゃんっ子だった私に祖父がよく見せてくれた、不思議な石があった。
「願い石?」
「そう。これはね、石にかけた願いが叶うと、透明に変わる石なんだよ」
祖父がそう言って大切そうに手のひらにのせたのは、小さな白い石だった。その石は願い事が実現に近づくにつれ、濁りなく澄んでいくのだという。
それなら願い事を叶えてくれれば良いのに、と私がふくれると、ミキちゃんは横着だなあと祖父は笑った。
石は数年変化を見せなかったが、私が高校生になった頃から少しずつ透明になった。私は祖父を訪ねては、いつもその変化を並んで眺めた。

「じいちゃんは念願叶って、今頃天国で笑ってるよ」
祖父の葬儀の日。泣きじゃくる私に祖母はそう言って、願い石と古ぼけた一枚の短冊を手渡した。

『人生の限り、ミキちゃんと笑っていられますように』

祖父の達筆な字が滲まないよう私の涙を受けとめたのは、透明に光る、願い石だった。
その他
公開:18/05/19 00:29
更新:18/05/19 00:54

ゆた

読んでくださってありがとうございます。
 * *
「予約の後輩くん」→「予約の後輩、水瀬くん」を交互に読む連作として、2タイトル通番で書いています。
【追記】
後半に入り、「予約の後輩くん」のみに切り替わりました。
 * *
プチコン2海:優秀賞「海の花」
七夕コンテスト:入選「願い石」
選出していただきました!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容