メーデー

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五月一日。
列を成す労働者の波をモーセのごとく二つに割いたのは、大規模なゾンビの行進だった。先頭で掲げられたのは『ゾンビにも健全な労働を!』と大きく書かれた横断幕だ。
このセンセーショナルな出来事は、あっというまに世界中へと広まった。
中でも身だしなみを整えたがった女性ゾンビへ向けられた、「ゾンビなんだから気色悪いことを喜ぶべきだ」という風貌に関する心ないセクハラ発言は、より事態を加速させた。
劣悪な労働環境の改善を訴えたゾンビの活動は実を結び、数ヶ月後、ゾンビ協会は希望者の容姿整備を認める運びとなった。これには当初ゾンビの間でも「綺麗なゾンビなど商売上がったりだ」と反発も起きたが、いざ施行してみると、死んだ直後の状態を維持でき、よりリアルな恐怖を与える、と多くのゾンビから支持を集めた。

現在ではその措置も選択制度化され、それらのゾンビは俗に、プリザーブドゾンビと呼ばれ定着している。
その他
公開:18/05/19 23:49

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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