羽田が飛んだ

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羽田空港が飛び立ちました――。
そのニュースに、みなは耳を疑った。
飛び立った? 飛行機ではなく、空港が?
まったく意味が分からなかったが、追って入った詳細はもっと分からないものだった。
「今日未明、羽田空港国際線旅客ターミナルが東に向かって飛び立ちました。空港は現在も飛行をつづけています」
やがて速報が入ってきた。なんとそれはハワイに着陸したというのである。
「きっと空港利用客の楽しげな様子を見ているうちに、我慢できなくなったのでしょう」
そんなテレビの解説に、人々は戸惑いつつも事態をただ見守った。

空港がまた飛び立ったのは一週間後のことだった。それは数時間のフライトを経て、無事に羽田へ降り立った。そしてその姿を見た人々は、ようやくテレビの解説が腑に落ちたのだった。
空港がハワイを満喫したであろうことは外観からも明白だった。元の場所に戻ったそれは、建物全部がアロハシャツで覆われていた。
その他
公開:18/05/19 23:04
スクー

田丸雅智( 東京 )

1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。2011年、『物語のルミナリエ』に「桜」が掲載され作家デビュー。12年、樹立社ショートショートコンテストで「海酒」が最優秀賞受賞。「海酒」は、ピース・又吉直樹氏主演により短編映画化され、カンヌ国際映画祭などで上映された。15年からは自らが発起人となり立ちあがった「ショートショート大賞」において審査員長を務め、また、全国各地でショートショートの書き方講座を開催するなど、新世代ショートショートの旗手として幅広く活動している。著書に代表作『海色の壜』など多数。

◆公式サイト:http://masatomotamaru.com/

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