花もぐら

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水辺に一輪の花が咲いていた。今まで見たことのない、鮮やかな赤の花。 少年はその花に見惚れた。
「お母さんの病院に持って行こう」
少年は花を手折ろうと茎を掴んだ。すると土がうごめき、花が大きく揺れた。ひょっこり現れたのは、もぐらだった。赤い花の茎の先が、鼻にくっついている。
「はなもぐら…?」
少年が驚いていると、もぐらはあっという間に穴の中に消えた。
「怒らせちゃった…」
少年はがっかりして家に帰った。
次の日、母が入院している病院を訪れると、母がニコニコ出迎えた。
「元気?」
「うん! 庭を散歩してたら、綺麗な花が咲いていたの」
驚いて窓辺に目をやると、庭にはあの花が咲いていた。しかも一輪だけではない。全部で4つ、仲良く並んでいる。
「あいつ、家族がいたんだ」
夕方病院をでて、そっと庭を覗いてみる。ちょうど4つのお尻がもぞもぞと、土へ帰って行くところだった。
その他
公開:18/05/19 21:30

あおい( 北海道 )

結婚し、幸せになりを潜めて3年。
再び書きたくて登場。
多分そのうちまた消える。

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