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「坊や、塩を持っていないか?」
小学校の帰り、怪しげな男に声をかけられた。
無視しようとしたところ、一緒にいた友人がゆで卵にかける塩を持っていたことに気付き、男に渡した。
「ありがとう」
男は受け取った塩をパイプに入れ、タバコのように吸い始めた。
口から青色の煙を吐く。
「ほぅ…これは太平洋の塩のようだね」
青色の煙の中、透明の魚が泳いでいる。僕らはそれに目を奪われた。
煙はあっという間に消える。
僕は家に帰るとありったけの塩を持ってきた。
男は青色の大きな煙を吐く。僕らは夢中になり、青色の煙の中で透明の魚を追い回した。
煙が晴れた時、男はいなくなっていた。

家に帰ると母が驚いた顔をして僕を抱きしめた。
「10年間もどこに行っていたの!?」
涙ぐむ母。僕は呆然とした。
ふと、ポケットの中に小さな箱が入っていることに気付いた。
でも僕はそれを開けられない。その中身を知っている気がするから…
公開:18/05/19 19:25

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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