未来で逢いましょう

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"みく"です。未来って書きます。
そう言って私より一回り以上年下の彼女は、丁寧に両手でお釣りを渡してくれた。
私はお釣りをもらったまま固まってしまっていた。
-僕のことは、みくって呼んでね。あ、年下か。じゃあ みくさんで。決まり~!
終電の滑り込む最寄り駅。節ばった細長い指。肩には白いチェロケース。甦る声。
-家は近所だよね?送ってくよ。安心して、変なことしないから。
みくさん。みくさん。悩みがちなみくさん。必死に探したのに、とうとう手の届かないところに行ってしまった人。
-また会おうね。
浮上する最後の言葉。
そうか。そろそろ七夕か。また会えたね。七歳違いだったのに私のほうが年上になっちゃったよ、みくさん。
怪訝そうな"みくちゃん"に何でもない、と笑顔で首を振る。お釣りをしまいチェロケースを担いだ私は、タクシーを呼ぶために店を出た。
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公開:18/05/19 16:37
更新:18/05/19 16:47

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