ウルフマン

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「俺はハンターだ」
酔った男は得意顔で自分が今までに仕留めた狼について語り始めた。
「もうすぐ奴らは地球上からいなくなる。この俺様のおかげでな」
この空港ラウンジでは目的地が遠いだけに客は少々景気をつけすぎてしまう。
男もそのうちの一人で「おい酒を持ってこい!」と大きな拳をカウンターに叩きつけた。
バーテンダーがしずかに男を見返した。
「何だ俺に文句でもあるのか」
「はい。じつは私、狼だったもので」
男は大笑いして、
「面白い。じゃあ、あんたにも一発くれてやろうか」と凄んだ。
構内に搭乗手続の最終を知らせる放送が流れる。
バーテンダーはつけていた蝶ネクタイを静かに外すと、
「私は臆病者です。これまでずっと月の運命から逃げてきました。でも・・それも今日までです。あなたと同じ便で帰ります。
どうです、地球に着いたら一杯やりませんか?ウルフムーン(満月)。あちらでは今夜この星をそう呼ぶそうです」
ホラー
公開:18/02/21 21:14
更新:18/07/09 16:08

杉野圭志

元・松山帖句です。

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