忘れ花

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「こんな季節に藤の花なんて珍しいな」

真夏の太陽に照らされた薄紫の花は僕らをゆっくり見下ろしている。藤の花は確か春に咲く花だ。

「忘れ花」

「えっ!?」

「時期に遅れて咲く花をそう言うんだよ。なんかみんなと違って仲間外れみたいで嫌だね。昔の私を思い出すよ」

優子は髪を撫でるように花を触った。昔いじめられた記憶を思い出しているみたいだ。

「俺はそうは思わないな。個性があっていいじゃないか。それに・・・」

俺はゆっくりと優子の手を重ねた。

「誰も見ない花なんてない。忘れ花って誰かが見てそう言ったんだろ?」

「ふふ、意味は少し違うけど・・・ありがとう。花も喜んでいるはずだよ」

その瞬間花は輝いたように見えた。忘れかけていたは花は誰よりもそこに輝いて存在していた。
青春
公開:18/02/21 16:34

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