第17話「ミラクルレコード」

最近、姉と妹の翠が朝も早よから駆けっこの練習をしている。学校で、冬の駆けっこ大会があるらしいのだ。お陰で朝食を作る役があたしに回った。
「ンで、どうなのよ」
味噌汁を啜りながら成果を聞く。
「今日は18秒6だったね」
「18？　翠、そんなに足遅いの？」
学校では10秒を切るように頑張ろうと言われているらしい。
「絶対なんか間違ってる気がする。スタートの仕方とかフォームとか」
あたしが苛々して言うと、姉は電話をし始めた。彼氏が陸上をやってたのを思い出したらしい。
翌日タイムを聞くと、16秒5だと言う。
「ええっ。そんなに変わるもんなの？」
喜んだら、翠は浮かない顔で、
「学校だともっと速く走れるのに。川原で走るから遅いのかも」
と言うので、休日、彼氏も参加して校庭で練習することにした。ゴールラインに立ち、計るよ、と言った姉を、彼氏が制した。
「10秒切るって、まさか100mで？」
「あ……」