止まる時計

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父は、家の中のどこにいても時間が確認できないといやな人だった。
だから実家のいたるところに時計がある。
柱時計に目覚まし時計、置時計多数。

便利だ。

キッチンだろうがリビングだろうが、どこに居てもどの椅子に座っても時間がわかる。
トイレの中にまで時計がある。
本当に便利だ。

しかし、困ったこともある。
それらの時計は微妙に時間がずれており、どれが本当の時間なのかがわからないのだ。

さらに、父が他界してからは厄介になった。
時計をメンテナンスする人がいないのだ。
電池切れになったものはそのまま放置され、時間のずれを誰も直さず、実家の時空間はカオスになっていた。

「こんなので、よく時間がわかるね」
母に言うと、「大丈夫、携帯を見るから」と答えが返ってきた。

時計を直そうよ。
その他
公開:18/02/19 22:56

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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