夢の中に

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 寝ている時、他人の夢に入れるようになった。行先が鮮明に思い描け、相手が寝てさえいれば、どこにいる、誰の夢にでも入れるように。私は様々な夢に侵入しては、時に眠りの主をからかい、時に他人へとなりすまし、遊行を繰り返した。
 そんなとある夜、ほんの出来心から、凶悪な死刑囚の夢に入った際のことだった。私は夢の中のその罪人に、殴打、拘束されて、抜け出せなくなってしまった。永遠とも思える暗い時間をその場所でひとり過ごしたあとに、遂に私はそのまま死刑囚として目覚め、処刑されることになった。
 傍聴席では、“私”が笑っていた。
ホラー
公開:18/02/20 20:01
更新:18/02/20 20:08
ショートショート十番勝負

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