救済

ふぅ。とベンチに腰を付き、缶コーヒーを一杯口にする。
理不尽な上司の説教、へらへらとした後輩への指導で疲れきっても、まだ正午というのだから恐ろしい。
はぁ。とため息が出て止まない生活に、若い女はうんざりしていた。
「お疲れですか。」
と後ろから声をかけられた。声の主に目をやると、綺麗な黒髪が印象的な女性だった。端的に言えば美人だった。
「ええ、はい。もう何もかも疲れちゃいました」
「それはそれは、ご苦労様です。」
そう言って女性は私に何かを手渡す。
「コーヒーです。濃い目ですが良かったらどうぞ」
なんて心優しい女性だろうか。二杯目のコーヒーという事を忘れさせるくらい嬉しかった。
勢いよく貰ったコーヒーを飲み干すと、体が異変を訴えた。

女性の目を見ると、とても寂しがるような、申し訳なさそうな顔をしていた。
「人生同様、疲れたときにはコーヒーが一番ですからね。ゆっくりお休みなさってください」