一粒の種

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「1シュウカンイナイニ、ハナヲサカセラレナカッタモノハミナゴロシ」
 そんな脅迫と共に飛来した異星人は、私たち1人ひとりに1粒の種を与えた。
 どうやって花を咲かせるのかもわからず、初め人類は当惑した。だが、我関せずと一心に研究に取り組んだ科学者が世紀の大発見を成し遂げると、彼に与えられた種が立派な花を咲かせたという。
 何かの分野で成果を上げれば花を咲かせられる! それ以降は成果を上げるために皆が血みどろの競争を始めた。
 だが、何の才能もない私は、必ず誰かに先を越され、一向に花を咲かせることはできなかった。
 公園のベンチでしょんぼりとしていると、1人の子がいじめられているのが目に留まった。私が止めに入ると、その子の種が無残にも踏みつぶされていた。かわいそうになった私は、その子に自分の種を与えた。
「お兄ちゃん、ありがとう!」
 私はその子の笑顔こそ、私が咲かせた花なのだと思った。
SF
公開:18/02/20 18:08

ToshijiKawagoe( 北海道 )

・『SFマガジン』 2011年10月号「リーダーズ・ストーリィ」 掲載
・『公募ガイド』第22回小説の虎の穴、佳作
・ 樹立社ショートショートコンテスト2012、5等星
・ 第157回コバルト短編小説新人賞、もう一歩の作品
など、SF、ミステリ、童話、純文学など分野を問わず、ショートショートから短編、長編にとチャレンジしてきました。
 しばらくご無沙汰していましたが、最近復活しました。

ブログ http://rashi.cocolog-nifty.com/
 

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