氷上の華

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その華にとって、陸地はとても棲みにくい場所であった。華は自ら棲みやすい場所を求め、森を越え海を越え、なんと氷の上に棲み始めた。
すると華は、まるで魚が水を得たような生命力を得て、大輪の華を咲かせた。その美しさに、氷の周りに棲む花たちを魅了させた。

華は成長が止まることなくドンドン美しくなるが、美しくなりすぎたせいで神様に好かれ、寒がりな神様は自分が眺めやすい陸地へ連れ戻そうとした。
けれど華は必死に抵抗した。「氷の上に居たいのだ」と。

何度連れ戻されても、華は再び氷の上へと舞い戻り棲んだ。華と神様のやり取りを眺めていた花たちは、「どうか華を陸へ連れ戻さないでほしい」と神様に懇願した。
沢山の花たちにせがまれた神様は、しぶしぶと華を連れ戻すのをやめ、自分が寒さを我慢するようにした。

こうして、華の努力と花たちのエールがあり、今も華は気高く美しく、氷の上で咲き続けている。
その他
公開:18/02/20 17:39

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