魔法のスプーン　6

おや、顔色が悪いですよ。どうかなさったのですか
あなたは
申し遅れました。私、黒猫商会の営業部長ミサと言います。見ての通り行商の猫です。肩書は魔術師。あなたの悩み、私なら解決できるかもしれませんよ
実は先程、お医者様からうちの娘はもう助からないと告知をされましたの
それはお困りですね。それでしたらこれをお使い下さい
スプーン
勿論、ただのスプーンでは御座いません。自分の命を他人に与える魔法のスプーンです。私の命はどうなってもいいからこの子を助けてと言う瞬間があるでしょ。この商品はそれを現実に出来る物です。ただし、命は取り出して時間が経てば消滅します。鮮度が命です。それと命の器には限界があります。匙加減を間違えればあなたは死にます。おや、どうしました。手を震わせて。それでは取り出した命が零れますよ。早くなさい。娘の命は今、あなたの手の中にあります。まさかこの期に及んで命が惜しくなりましたか