ブーケ・トス

サバンナのハイエナ。
ブーケトスの独身女性。
抜けるような青空の下、女たちはキレイめのドレスに身を包み、カラコンをつけた目を血走らせていた。その視線の先には、ブーケ。さりげなくそれでいて煌びやかなネイルが施された手は、力んで血管が浮いている。いつどこに来ても確実に掴み取れるように、腰を深く落とし浅く呼吸をする。周囲を牽制するかのように唸る者もいる。既婚者や独身男性が動画や写真を撮る音が響く。
永遠にも感じるような時間が過ぎ、女たちの集中が限界に達しかけていたそのとき、ようやく新婦がブーケを持つ手を振り上げた。

ブーケが空を舞った。

咆哮と共に、女たちは大地を蹴り上げた。
捲り上がるドレスの裾を気にする者は誰一人としていない。おしゃれも、おべっかも、気遣いも、今ここには無い。快晴の空の下、女たちは純粋な生き物になった。

「えっ、嘘〜！？ やだ取れちゃった〜！ びっくり〜！！」