小言変換装置

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博士がそれを発明したのは、毎日狂った様に妻が小言を吐き出す事に、ついに耐えきれなくなったからだ。
「よし、出来た」
出来上がったのは、ワイヤレスイヤホン型の装置。さっそく耳に装着し、朝食の支度真っ最中の妻の元へ。
「おはよう!」
妻は彼を見るなり眉間に皺を寄せ、口を忙しなく動かす。しかし、彼に聴こえてくるのは、シャウト系の音楽ばかり。そう、これは相手の言葉のニュアンスを認識し、約四千万曲の中から雰囲気に合ったものを選んでくれるという代物だ。
(これなら小言もカッコよく聴こえるな)
次々と選出される曲達に、あれ程苦痛だった妻の小言も今や楽しみと化していた。それからというもの、彼は毎日笑顔で過ごせていた。しかし、それとは逆に、妻は日に日に顔を曇らせていく。そして、半年程経ったある日。妻が何か呟いた後に渡してきたのは、離婚届。妻の最後の言葉を聞けなかった彼の耳に届いていたのは『蛍の光』だった。
その他
公開:18/02/17 13:23
更新:18/02/17 13:27

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