人生の記念日

55歳の誕生日まであと一ヶ月。過去の出来事が走馬灯のように思い出される。

55年前の2月18日に僕は生まれた。その時の記憶なんてないけれど。
18歳の誕生日に初めて恋人ができた。彼女は僕と同じ誕生日で同じ考えを持つすばらしい女性だった。その思いは今でも変わらない。
25歳の誕生日に僕らは入籍し、結婚式を挙げた。
35歳の誕生日に僕らはマンションを買った。
45歳の誕生日に僕らは喧嘩し、別居した。
46歳の誕生日に僕らは仲直りした。長い一年だった。

彼女と話ができる時間はもうなさそうだけれど、僕はまったく心配していない。彼女の考えることと僕の考えることは同じだと確信しているからだ。

　　*

「看病疲れ……ですかね」
「旦那さんの延命をあれほど望んでいたのに……」
　脳梗塞で一ヶ月も意識の戻らなかった夫の病室で、女は夫と自分の頭を撃ち抜いて絶命していた。
　2月18日の朝のことだった。