香りの秘密

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世界中で爆発的に売れた香水のラボに忍び込んだ産業スパイが捕まった。椅子に縛られ、目の前にはラボの主任技師が白衣マスク姿で仁王立ちになっている。
「新作の秘密を盗みに来たのでしょう。特別に教えてあげてもいいわよ」
 簡単過ぎる事を訝しがるスパイの前に、女は一輪の花を取り出した。
「これは私が人跡未踏の密林の奥地で見つけた希少な花。新作にはこの花のエッセンスがごく僅か検出不能なレベルで入っている。嗅ぎたい?」
 ところが差し出された花の香りは弱く青臭く秘密の香りには程遠い。
「この花の香りの本質は強い幻覚作用。性別や好み体調に関わらず好きな香りだと思い込ませる事ができて中毒性も高いから、誰もがこれ無しではいられなくなるの。それが世界的ヒットの秘密。ところで極々微量でさえ効果を発揮する花の香りを直に嗅いだ感じはどうかしら。ふふっ。聞いたところで、あなたの頭の中はもうお花畑になっているわね」
ミステリー・推理
公開:18/02/17 23:14

堀真潮

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