第14話「地球の穴」

5
201

「地球の真ん中を通って反対側に続く穴があるとします。もしこの穴に落ちたらどうなるか、考えてきなさい」という宿題が理科の授業で出た。
翠は地球の反対側に行けると思った。家で二人の姉に聞いてみた。
「重力があるからね。真ん中で止まるのよ」
と長女は真面目な顔で言い、
「鬼がいるから踊りを見せて宝物をもらうの」
と次女はふざけた。
呆れた翠は、ふと道路工事現場に目を止めた。地球の穴。夕方、工員が帰ったのを見計らって穴の中に飛び込んだ。すると、地下には大勢のおっさんがいるではないか。みな同じ服を着て、地下道を慌てて走っていく。暗闇の中、翠は流れに押されて走るしかなかった。そして、いつしか地上に出た。そこは駅前だった。
翠は「地球の穴に入ると大勢のおっさんと一緒に駅に行ける」と満足げに書いた。
数日後、凶報が町を騒がせた。
「服役中の囚人100人が刑務所から地下道を通って脱走、現在も逃走中とのこと」
SF
公開:18/02/17 22:48
更新:18/02/21 10:59
三姉妹 家族

射矢らた( 大阪 )

2018年2月8日SSG登録
Twitter:https://mobile.twitter.com/iruya_rata


<三姉妹シリーズ>
親もとを離れて暮らす三姉妹の暮らしを
ショートショートで綴ります。
長女・葵(あおい) 社会人
次女・茜(あかね) 高校生
三女・翠(みどり) 小学生

そのほか1話モノ。
 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容