春の花屋

0
205

 春にだけ開く花屋がある。安いがなぜか黄色い花しか置いていない。薔薇も百合もラナンキュラスも黄色だけ。
「実は特異体質なんです」花屋は言った。
「御伽話には金の卵や真珠の涙の話があるでしょう。私の場合は花が出ます。特にこの季節は家に溢れる程なので、花屋で売る事にしたのです。ちょうどチューリップの良いのが……は、はくしゅん!」
 くしゃみと同時に花屋の鼻からつるんと黄色いチューリップが飛び出した。
「しかも花粉症なんです。くしゅん!くしゅん!」
 続いて飛び出したのは菜の花に水仙。フリージアに金鳳花。黄色い春の花が次から次へと飛び出して来る。花屋は出て来た花を集めて、くるりと可愛らしいブーケにした。
「今日はこんな感じです。お安くしますよ」
「ハナ、ですね」
「はなです」
 ハナ、はな、花……鼻……。
 まあ、いいか。
 他の客は知っているのかいないのか、春の花屋はそれからも繁盛し続けた。
ファンタジー
公開:18/02/17 22:34

堀真潮

朗読依頼等は、お手数ですがこちらまでご連絡ください。
Twitter  @hori_mashio
tamanegitarou1539@gmail.com

 

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容