バラ色の人生

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リクエストの曲がかかった。
ああ、このピアノの出だし。
鍵盤の一音一音が琴線に触れる。
そしてこの声。
僕の魂はふるえる。
初めてこの曲を聴いたのは大学の生協でだった。
有線から流れ出たピアノの音にふと足を止めた。
歌詞は英語でちっとも理解できなかったのに、胸の底から言葉にできない感情が突き上げた。
「この曲、知ってます?」
勢い余ってレジの店員さんに聞いた。
かなり有名らしいその曲名を教えてくれた後で、彼女はこう言った。
「CDよかったら貸しましょうか?」
思えば、
この曲のおかげで僕は君に出会えた。
この曲に励まされて僕たちは夢を追いかけた。
この曲が愛は花だと教えてくれたからその種を懸命に育てた。

ねえ、僕たちは、わりかしきれいな花を咲かせたんじゃないかな。

「The Rose」の曲とともに赤いバラが投げ入れられた男の棺。
春雪の空に出棺のクラクションが響き渡った。


 

 
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公開:18/02/14 22:21
更新:18/12/06 08:27

杉野圭志

元・松山帖句です。

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