猫の就職活動

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「ダメですね。食べ物をもらう時は媚びて、食べ終わったら知らん顔が基本です」
 また失敗した。何度挑戦して部長をしていた頃のクセがでてしまう。こんなことでは猫になれない。
「時間はたっぷりあるのでいくらでも挑戦していただいて結構ですよ」
 オレは猫がたまらなく好きだ。どうしても猫になってみたいのに、オレ自身は猫らしくないのだ。
「ありがとうございました」
 礼を言って転生就職試験の会場を出た。
 天国は平和でいいが、飽きてしまう。だから猫に転生しようとしているのだが、うまくいかない。
 昔は無試験で望むものに転生できたらしいが、そのせいで「らしくない」生き物が増え、妖怪と呼ばれるようになってしまった。今では転生適性を徹底的に調べてから送り出すことになっている。
 オレがうなだれて歩いていると、友達がやってきた。
「また落ちたのか」
「落ちたんじゃなくて昇ったままなのさ。下界に降りられない」
ファンタジー
公開:18/02/15 14:12
更新:18/02/15 14:13
ショートショート10番勝負

一田和樹( バンクーバー )

小説を書いています。
Amazon著者ページ https://t.co/ZrGUiK7HaJ 
公式サイト http://ichida-kazuki.com 
ツイッター @K_Ichida
使用している写真は全て私自身が撮影したか描いたものです。

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