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ヒラリ、ヒラリと花弁が舞った。風に乗り、はるか上空、高層ビルの窓に、スタンプを押した。
春、それは出会いと別れが交錯する時期。世間では酒だ、花見だと浮足立つ者もいる。だが、彼らは皆、知らない。この花弁の意味を

何を読んでいるの。
彼は驚いた様子で私を見た。
驚かせちゃった。私、この桜なの。
ああ、これは驚いた。まさか桜が喋るとは。それに君は若い女性だったんだね。
ええ、そうよ。この場所は私の特等席。この場所にいるとね、いろんな事が起こるの。告白だったり、別れだったり。あなた、また明日もここに来るのでしょ。君の話をもっと聞きたいな。
ごめん、俺、親の都合で今日、引っ越しするんだ。でも、君のことは忘れないよ。また、いつか、会いに来るから。
うん、私も忘れない。遠く離れても手紙を出すから、絶対に。

それから十年後

今年も書いてくれたんだね。
高層ビルに住む彼の掌には小さな手紙が乗っていた。
公開:18/02/13 12:26
更新:18/02/13 13:31

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