ゴーストハウス

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 「大丈夫よみんないるんだし。一生の思い出になるって」
 珍しく彼女が積極的に僕を誘う先は有名な幽霊物件だ。先週ゼミのメンバーと探索に行ってから、彼女は不参加だった僕をしきりにその廃屋に誘うのだった。
「廃屋に入るのは危ないし、そもそも不法侵入だよ」
「崩れたりしないって。それに小説の参考になるわよ」
「……」
 彼女は僕の扱い方を良く心得ていた。
「じゃあ現地でね。びっくりして泣き出さないでよ」
「誰が」
 泣くかよ、と言う前に通話は切れた。

***

「なんだよ……これ」
 廃屋なんてない。全焼して焼け落ちた廃材の山。参加した五人のメンバー分の黒焦げの死体。真っ黒なマネキンのようなそれはどれが誰かすら分からない。
 確かにみんないて建物はこれ以上は崩れようがない。小説のネタにもしようと思えばなるだろう。

「ほら、やっぱり泣いてる」

 振り向いてもそこには夜の林道があるだけだった。
ホラー
公開:18/02/13 10:00
更新:18/02/13 07:18

木船田ヒロマル

カクヨム×B☆Wコラボコンテスト受賞作でデビュー。
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