花の子ちゃん

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花屋の仕事は過酷だ。
市場での仕入れ、スーパーへの納品、配達、アレンジ、伝票整理とやることは後を絶たない。
ああ、今日もお昼、食べ損ねちゃった。
時計はいつの間にか14時を回っていた。
お花屋に夢を抱いて入社した同期の子たちはみんな辞めてしまった。学生時代フルートばかり触っていた私の手は、毎日の水仕事と荷運び、鋏作業で今やひび割れたお饅頭のようだ。
「お花の先生のとこ、至急配達お願い」
「はい」私は車に乗り込む。
それでも私が辞めなかったのには理由がある。
助手席にちょこんと女の子が座った。
花の子ちゃん、と私は呼んでる。私以外、誰にも見えない。
アネモネの蕾の中で眠っていた赤ん坊は、この3年で小学生ぐらいになった。
頭から生えた緑の若葉はきっと花の子の印。そのうち美しい花を咲かせるに違いない。
こうなりゃもう親の気分です。
「花の子ちゃん、飛ばすよ!」
「はーい」女の子がくりんと笑った。
ファンタジー
公開:18/02/13 00:45
更新:18/02/15 09:21

杉野圭志

元・松山帖句です。

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