冬虫夏花

　わたし、夏にきれいな花になるのよ。ええ、キノコでも草でもないわ。
　あらなぜ笑うの。
　そうね、普通はなれないわ。あなたもね。
　なぜ？　それはおいしいものを食べるからよ。ほらその今あなたが食べようとしているその実とか。
　わたし？　わたしはどうせならきれいな花に生まれ変わりたいからこれを食べるの。
　そうこれ。そうね。食べられるものではないわね。
　でもね、きれいな花になれるのよ。わたしは母から聞いたの。母はおばあちゃまから。そう代々伝わってる秘密。
　あらいやだ。わたしおしゃべりだからつい話してしまったわ。お願い内緒よ。ではごきげんよう。
　えっ、それとこれ交換して欲しいって。だめよ。やっと見つけたものなんだから。交換したら、わたし花になれないわ。
　ふう、仕方ないわね。換えてさしあげるわ。じゃ、きれいな花になってね。ごきげんよう。

　これで食べ物にありつけるわ。ちょろいもんね。