ストーカー

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 アイツの家は三丁目。汚いどぶ川を越えた向こう側。洪水が発生したら流されそうで、地震が起きたら液状化で倒れそうな最低な家。
 職場からの帰り道。おれは恨みを込めてアイツの家を観察する。これがおれの日常。最低でも向い側の公園の茂みに三十分は潜む。アイツの生活を探り、弱みを探り、支配下におさめるのだ。
 家にいることは、無言電話で知っている。あのわめき声は最高だ。
 カーテンがゆれる。アイツが動き始めた。双眼鏡を持つ手が震える。オレは公園の茂みから身を乗り出した。何を始める気なのか。オレに弱みを見せてくれ。
 突然、玄関が開いた。隠れる暇がなかった。アイツは、おれの目を見据えて、こう言った。
「ちょっとあんた。いつになったら帰ってくるのよ」
その他
公開:18/02/14 01:29
更新:18/02/14 01:37
ショートショート10番勝負

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