雪と手袋

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ママ、ごめんなさい。手袋の片方を失くしちゃった。
家の中から叱言が聞こえてくる。もう!あれほど注意したのに、と。
この地方では珍しく昨夜から降り積もった雪。遊ぶのに夢中になって、いつのまにか手袋の片方をどこかに落としてしまったらしい。小さな子供ならよくあることだ。
でも彼は知っていた。それがママからのクリスマスプレゼントであったことを。
少女が嬉しそうにそう話しているのをこっそり聞いていたから。
悲しそうな泣き声を聞きながら、よし、明日の朝までに僕がきっと見つけてあげるよ、と彼は決心した。

翌朝、小さなピンクの手袋が家の前に届けられた。
それを見つけた少女の瞳が驚きと喜びで、わあ!と輝いた。
良かったね。夜通し探し回った甲斐があったよ。今日は良く晴れるからきっと僕は消えしまうけど、いつかまた雪が降り積もったら僕を作ってくれると嬉しいな。
雪だるまは少女の笑顔を見届けながら溶けていった。
ファンタジー
公開:18/02/13 19:09
更新:18/06/10 04:46

Kato( 愛知県 )

ヘルシェイク矢野のことを考えてたりします
でも生粋の秦佐和子さん推しです

名作絵画ショートショートコンテスト
「探し物は北オーストリアのどこかに…」入選

働きたい会社ショートショートコンテスト
「チェアー効果」入選

ありがとうございます

 

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