愛を煮込んで花束を。

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恋人と食事をした。
夜景が綺麗なレストランで、高級なフランス料理。私の胸は期待で高鳴る。
「誕生日おめでとう」と言って彼が差し出したのは25本の薔薇。
ではなく、卵、ちくわ、大根。
「これは『おでん花』と言って、俺の田舎に古くから伝わ」話を遮るようにびんたをして私は店を飛び出した。おでん花?何それ。誕生日には薔薇がいいって言ったのに。
「待ってくれよ」
彼が追いかけてきた。私は足を速めたけれど、すぐに追いつかれた。
「結婚しよう」
「ふざけないで」
「あのおでんそっくりな花は俺の田舎に古くから伝わる花なんだ。ほら、おでんって別々の具材が一つの鍋に入ってるだろう?夫婦も同じだと思うんだ。結婚しよう」
真剣な目に、私は自然と頷いていた。なるほど。そうかも知れない。夫婦も、元々は他人が寄り添って同じ苗字になる。
薔薇よりも顔を真っ赤にしている彼を見て、おでんのように温かい家庭を作りたいと思った。
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公開:18/02/12 03:29
更新:18/02/14 00:21

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