顔佳草(カオヨグサ)

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姉貴の電話に叩き起こされ、駆けつけた時には
親父はもう
独りで旅立った後だった。
(まだあったかいじゃねえか!この部屋の天井辺りに、まだ漂ってるんじゃないのか?)「親父!」

口下手な人だった。自分の知っている情報だと、相手の事などお構い無しに何度も繰り返し話すものだから、お袋も親父と話すのが億劫そうだった。
そのお袋が先に逝ってしまい、無頓着な親父の家は荒れ放題。ゴミが散乱した庭の片付けをしていると
「その花だけは残してくれ」と、滅多に物に執着しない親父が言った。
俺は花には疎いのだけど、姉貴が言うには『芍薬』…毎年初夏に薄桃色の花びらを幾重にも重ねる大きな花が咲くらしい。

親父の納骨も終わり、遺品整理をしている時に、アルバムを見ていた姉貴が「あ!」と呟いた。
そこには
俺たちが知らない頃の親父とお袋。
モノクロ写真に写る2人の後ろには、幾重にも重なる花びら達が揺れるように咲いていた。
その他
公開:18/02/11 20:03
更新:18/02/15 21:05

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