公園の初恋

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僕の初恋の女の子は、いつも公園の隅でうずくまっていた。濃いピンク色のワンピースがよく似合う女の子だった。
「何をしているの?」と僕が聞くと、その女の子は「ここに花壇があれば素敵だと思って」と言って笑った。植えたい花があるという。リコリス・ジャクソニアナという花。
女の子の言葉を真剣に受け止めた僕は、女の子が帰った後、公園に小さな花壇を作った。
翌日、僕が花壇を見せると、女の子はポツリと「ありがとう」とだけ言って走り去ってしまった。それ以降、女の子は公園に姿を現さなかった。噂では引っ越してしまったらしい。
女の子が来なくなっても僕は公園に通った。いつかまた彼女に会える気がして。そんな僕の行動を見透かすように、夏の終わりに花壇で花が咲いた。濃いピンク色の花、リコリス・ジャクソニアナだった。

久しぶりに訪れた公園で、そんな思い出話をしていると「そんなこともあったわね」と、隣にいる君が笑った。
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公開:18/02/12 22:47

小狐裕介

作家としてショートショートや短いお話を書いています!

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光文社文庫「ショートショートの宝箱」に「ふしぎな駄菓子屋」収録。
幻冬舎「未来製作所」に「砂漠の機械工」他収録。

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