言い伝え

0
214

 彼女は自分の髪の毛を切る。曇り空なのに電気も付けていない暗い部屋にひとり。床に新聞紙を敷いて、その上に椅子を置いて座っている。腰まで伸びた彼女の髪の毛はすっかり傷んでしまったらしい。毛先と頭のてっぺんでは髪色がまるで違っていた。
 彼女がハサミを握るたびにジャキリジャキリと音が鳴る。それに遅れてパサリパサリと髪の毛が落ちる音が聞こえる。ジョキリジョキリ。パサリパサリ。彼女はためらうことなく髪の毛を切り落とす。ジョキリジョキリ。パサリパサリ。足元には髪の毛の山が出来上がっていた。
 彼女は手を止めてやおら立ち上がった。辺りを見渡して何かを呟く。すると一瞬にして床に散らばった髪の毛は黄金の砂となり、キラキラと輝いた。彼女はそれらをほうきで集めて窓から天に向かって投げた。曇り空は見る間に霧散し、太陽が顔を出す。部屋に光が射して彼女の顔を照った。
 突然天気が良くなる日は彼女のおかげなのである。
ファンタジー
公開:18/02/11 00:37

だんご( 石の下 )

だんごむしのだんごちゃん。まるくなって空を見つげる。
ツイッター @Fdng7

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容