第4話「避妊税」

避妊税とは、避妊行為が対象の税だ。少子化対策にも繋がるとして与野党一致で試験的に施行されたが、性病の蔓延により半年足らずで廃案になったこの税は、若いカップルたちにとって死活問題となった。
「ねえ、破れてない？」
上体を起こす匠に葵は聞いた。
「大丈夫だと思うけど」
不用意につまもうとする彼氏を葵は制した。
「乱暴にしちゃだめよ。私が外すからじっとしてて」
葵はだらりと力つきた匠のそれにまとわりつく薄ゴムの皮膜を慎重に外した。
「洗えばあと何回か使えるでしょ」
コンドームも課税対象で一個三千円もする。最近は避妊具を使わず妊娠してしまうケースも増えているらしい。
「茜ちゃんとか、大丈夫なの？」
妹の名前を言われて、葵はギョッとした。茜に彼氏なんて。
「あの子はまだそんなことしてないよ」
たかを括っていたある日、茜の異様な嘆願に逡巡することになった。
「お姉ちゃん、あたしバイトしたいの」