タイムミシン

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妻の運転する車に乗る夫。
「なぁ、下から変な音がきこえないか?」
「この車は、タイムミシンといって特定の時間と現在を縫い合わせることができる装置なの。ほら、歴史をつむぐというじゃない? 過去も現在も未来も糸でできた一枚の布のようなもので、時計針とクロノ糸を使うことで時間の裁縫が可能なの」
「じゃあ、この音は……」
よく見ると、妻が踏んでいるのは足踏みミシンのペダルだ。
前方の景色を見た夫は驚いた。運転席側には超高層ビル、助手席側には太古の密林が広がっている。
「あなた、熱心に化石収集するほど恐竜がお好きでしょ」
「これはすごい。でも、こちらの時代に影響はないのかい?」
「安心して。この装置のドアを通じないとこちらの時代にはこれないの」
すると、妻は助手席側のドアを開けて、夫を突き落とした。そして、針を抜き、糸を切った。
助手席のシートには夫婦のかけ違ったボタンがひとつ落ちているだけだった。
SF
公開:18/02/09 12:53

そるとばたあ( 神奈川 )

★そるとばたあの400字SSは、ことば遊びと文章のリズムにこだわり、音を体感できる物語がコンセプトです!

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