第3話「捕りもの騒動」

夕方、図書館から帰ったあたしは異様な光景を見た。田舎から訪れていた祖父が、妹の翠と家の中で虫捕り網を握ってなにやら天井を睨んでいる。
「え、二人とも何してんの」
「茜、静かにせい！」
二人にジロリと睨まれた。ハエでもいるんだろうか。あたしも何となく天井を見渡してみるが、何も見つからない。
「この部屋には飛んどらんわ」
「おじいちゃん、台所かも」
「よし、気いつけえよ」
抜き足差し足台所へ移動する二人について行くと、夕飯の支度をする葵姉ちゃんが、あたしの顔を見て噴き出した。
「ちょっと、お姉ちゃん。おじいちゃんたちなに捕まえようとしてんの？」
葵姉ちゃんは答えず手招きする。あたしがそばへ寄ると、味見、と言ってカキフライをよこした。
「おじいちゃんね、スマホ買ったのよ」
「それがどうしたの」
「でね、お母さんに言われたらしいの。私たちの家ならwi-fiが飛んでるって」
カキフライを噴いた。