呼吸税

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国が消費税の増税を謳う中、なかなか実現に至らない現状に怒り狂い、ある大臣が役人に怒鳴った。
「いつになったら税収が増えるんだ!」
「しかし大臣…」
「うるさい! 消費税が増やせないなら新しく税を作るまでだ。各自、いい税金案を出すように!」
指示を受けた役人たちは渋々案を持ち寄った。税金を多く集めるには、その課税対象となる人が多いほどいい。そして大臣が採用したのは、呼吸の回数に応じて課される「呼吸税」なるものだった。
国民は猛反発したものの、国は有無を言わせず採決した。
税率は、呼吸1回につき0.1円。人は1日約3万回の呼吸をするので、1日3000円の負担である。これが全国民に上るので、莫大な額になった。
国民は重税により、やがて反発する気力さえなくなってきた。苦しみであえぐ者が続出する中、大臣だけは満足そうに笑って言った。
「この税金には国民の関心も高いようだな。みんなゼイゼイ言っている」
ホラー
公開:18/02/08 14:37

田丸雅智( 東京 )

1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。現代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務める。また、全国各地で創作講座を開催するなど幅広く活動している。17年には400字作品の投稿サイト「ショートショートガーデン」を立ち上げ、さらなる普及に努めている。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など多数。

◆公式サイト:http://masatomotamaru.com/

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