記憶の行商人

ちょっと、そこのあなた。記憶に興味ありませんか。
何ですか、あなたは。
ああ、申し遅れました。私、黒猫商会の営業部長、黒猫のミサと申します。
それでそのミサさんが私に何の用ですか。
怒らないで聞いて貰いたいのですが、お見かけしたところ、あなたは何度も大学受験に失敗したプー太郎の様にお見かけ致しました。
確かにそうですが、あなた、失礼ですね。
ええ、ですから怒らないで欲しいと申し上げたのです。
それで私にどうしろと。
実は私、こう見えて、色々な記憶を売っているのです。お一つ、お買いになりませんか。
どんなものを売っているのですか。
一番の売れ筋だとスポーツ、勉学、旅行の記憶ですね。お金持ちの中にはご自身の記憶を息子に贈与される方もいらっしゃいます。その際はその手数料を頂いております。あなたの場合、大学教授の記憶があれば簡単に合格しますよ。ただ、頭脳に空きのメモリーがあればですが。