珈琲に酔う日

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夕方、シーリングファンの回る落ち着いた雰囲気の喫茶店で、店内最奥窓際の席を取る。いつもの席である。

店内にビル・エヴァンス・トリオの演奏の流れる中、給仕されたお冷で一息つく。注文したのはいつものブレンド。ここのブレンドは直火焙煎で中深煎り。確かに苦味はあるが甘くコクがある。
店特製の配合のミルクを加えると更に甘さが加わりそしてマイルドになるが、何より荒削りな珈琲の味を品よく整えてくれる。野性味を感じるブラックの味も好きではあるが。

夕日の輝きは遠く海を渡った南米の高山を思わせる。アンデスの民の屈託のない笑顔。空を悠々と旋回するコンドル。
赤と金で彩られた聖堂。あの懐かしき旅。

烏の声に我に返る。すっかり日は落ち、珈琲も冷めてしまった。残りを一息で飲み干すと席を立つ。
ポケットから千円札を取り出しカウンターに置く。460円、いつもの釣りの額。店主も心得ている。
そんないつもの土曜日。
その他
公開:18/02/08 17:39
更新:18/02/09 00:04

ひさみん

ショートショートというよりも短編小説、掌編小説という感じになってしまうかもしれません。
自分のペースでやっていこうと思っております。
ショートショート・ガーデンにアクセスする頻度は高くありません。
1回のアクセスで多くても10作品見るかどうかです。すみません。

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