ソニア・モーターカー

あの日はお姉ちゃんの12歳の誕生日だった。小さい頃から両親は「ソニアは特別だから」とバレエやピアノをたくさん習わせて、私とはあまり遊ぶことはなかった。
盛大な誕生日パーティーの翌日。お姉ちゃんは特別な学校に入るのだと言って、可愛い制服ととびきり上等なコートを着て両親と出かけたまま帰えることはなかった。
あれから20年。
私はエネルギー研究の道に進んだ。私が小さい頃には既に化石燃料は枯渇し、頼みの綱の再生可能エネルギーも温暖化による天候不順でままならない状況が続いている。
そんな中、人類の中に高エネルギーを出力する特別な者が現れたという報告がなされた。
2108年現在の人類の数は90億。人類の暮らしを支えるエネルギーを人類で賄う時代がそこまで来ている。私は今その最先端の研究に関わっていることを誇らしく思い、いつの頃からかお姉ちゃんの名前を冠したソニア・モーターカーで毎日大学院に通っている。