水餅

私は今、街で評判のスイーツのお店に来ている。噂ではどれも宝石の様に綺麗で美味しいらしい。
生菓子、水菓子、干菓子、氷菓子。どれを見ても目移りする。
その中でも一番の評判はこの水餅。
その形はまるで水晶の様。皿の底に描かれた模様が透き通って見える。常温に曝しておくと３０分で崩れてしまう。つまり、この店に来ないと食べられない一品だ。勿論、お持ち帰りは不可。

亭主、この水餅はどうやって作っているのですか。言いたくなければ無理にとは言わないが。
別に構わんよ。これは南アルプスの天然水と少量の寒天で作ったものだ。あと、ここにある物を足してある。
それは何ですか。
見ただけでは分からないがこの菓子の表面にはもの凄く薄い粘着質の膜がコーティングしてある。その正体は女達の嫉妬と恨みだ。それらを煮溶かしフォンデュの様に漬け込む。これで完成。ほら、他人の不幸は蜜の味というだろ。ほろ苦い大人の味だぜ。