貴方の家から近い店で、午後二時

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「じゃあ、いつもの店で」
「うん。貴方の家から近い店で、午後二時ね」
そう言い別れた後、男は自宅へ帰らず実家へ向かった。
「兄貴。え、どうしたの?」弟が驚きと少しの嬉しさが混ざった表情で言った。
「まあいいだろ別に。ちょっと帰ってきたくなっただけだよ」
急だから晩飯ないよと言う弟にすぐに行くと伝え、自分の部屋をちょっと覗き、爺ちゃんに渡しておいてくれと弟に饅頭を手渡しして花屋へ急いだ。実家の近くの花屋なら、まだ営業していると思った。


「で、それでさ‥‥」弟が下唇を噛む。
「ごめん。私がお兄さんてどんな人だったのなんて聞いちゃったから」弟の彼女の表情が曇る。
「優しいよね。お爺ちゃんにお饅頭とかさ‥‥」
「ああ。兄さんはそういう人‥‥って話してたらそろそろだな」
自宅近くのいつもの店で目を瞑る弟の顔を、毎年私は何故見に来てしまうのだろう。
店の時計が午後二時を知らせた。
ホラー
公開:18/02/04 16:33
午後二時

Aya

我流でやっています。

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