遺産
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その日、祖父の彰は天寿を全うし安らかに亡くなった。その訃報は新聞を通し、親戚一同に伝えられた。祖父は生前、不動産や株で資産を倍増し倒産間際の会社を立て直した人物である。それと同時に疑り深い性格でもあった。周りの誰も信じていなかった。・・・私以外には。
彼は本業の傍ら骨董の収拾に傾倒していた。珍しい掘り出し物があると聞けば私を連れ、全国各地を渡り歩いた。掛け軸や壺など数え上げれば切りがない。
三日後、親戚一同が通夜に集まった。
遺産目当てなのは誰の目からも明らかだ。午後になり遺言書が弁護士立会の元、読まれた。
「遺産は土蔵の奥の箱に入っている。」
彼らは血眼になり該当する箱を広間に並べた。一つ目の箱を開けると空だった。二つ目の箱も空だった。さらにまた次も…。
なんだよ。遺産なんてどこにも入っていないじゃないか。
いいえ、私には分かる。あの箱は平安時代の名匠が作り上げた希少な文箱よ。
彼は本業の傍ら骨董の収拾に傾倒していた。珍しい掘り出し物があると聞けば私を連れ、全国各地を渡り歩いた。掛け軸や壺など数え上げれば切りがない。
三日後、親戚一同が通夜に集まった。
遺産目当てなのは誰の目からも明らかだ。午後になり遺言書が弁護士立会の元、読まれた。
「遺産は土蔵の奥の箱に入っている。」
彼らは血眼になり該当する箱を広間に並べた。一つ目の箱を開けると空だった。二つ目の箱も空だった。さらにまた次も…。
なんだよ。遺産なんてどこにも入っていないじゃないか。
いいえ、私には分かる。あの箱は平安時代の名匠が作り上げた希少な文箱よ。
その他
公開:18/02/03 15:59
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