祈りと願い

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 祈りと願いの差は、何かと問われた。
 私の仕事は神職であるからにして、問われるのはまあ、わからなくもない。
 しかし、これは自らが気付かなくてはならない気がして、少々思案した。
「何故、そのような事を尋ねたのですか?」
 私の問いに、その人は視線を泳がせ、こう言った。
「祖母に、言われたんです。
『願ってはいけない、それは全てを背負うことなのだから』と……自分では祈っていたつもりが、願いだと言うのです。それで……」
「なるほど。では、貴方は祈りとはなんだと思いますか?」
 私の更なる問いに、再び視線を泳がせ――そして、「『感謝』……ですか?」と答えた。
「解っているではないですか。それなら、自ずと答えは出せるでしょう」
 まだ困った顔をしていたが、頭を下げ、その人は帰っていった。
「願いは、『オモイ』なのですよ。そこに気付けるなら、きっと」
 呟いた言葉は、風にさらわれ、流れていった。
ファンタジー
公開:18/02/01 14:14

メム( 北海道 )

思いついたままに、文字を綴る。

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