ペット

お客様、こちらなんて如何ですか。お部屋で飼うならやっぱり猫です。愛らしい瞳と気まぐれな仕草が母性本能をくすぐります。お客様の中には大好きな彼女の名前を付けていらっしゃる方もおりますよ。
ごめんなさい。うちのアパートはペット禁止なんで、そういうのはちょっと。
それでしたらこれなんて如何でしょう。
これは何ですか。
目です。よく言うでしょ。目が泳ぐって。それがこいつです。世界中探しても目を飼っている人間なんて一人もいませんよ。

私は店員の口車に乗せられつい大金を出して買ってしまった。部屋で特にやることもないので店員の言う通り、目に絵画、書、骨董品を見せてやることにした。すると次第にプクッと目が肥えてきた。私は調子に乗って語学も教えてみた。すると今度は目が流暢に喋り出した。私は内心、これは友人に自慢できるぞとほくそ笑んだ。だが、目はこう言った。
まだ気付かないのか。お前は私に目を奪われている。