吾輩は水である
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吾輩は水である。名前はまだ無い。何処で産まれたか、とんと見当がつかぬ。ただ、じめじめした暗い場所でゴーゴー言っていた事だけは覚えている。吾輩はここで人間と呼ばれる生き物を初めて見た。何でもこの人間はわれらを生で食ったり、煮て食ったりするらしい。後で知ったのだが油で拷問された者もいたらしい。実に醜悪な生き物だ。であるからして吾輩の仲間は時折この者の体の中から攻撃を仕掛け、生還を試みる。あっちの突起をチクリ、こちらの突起をチクリ。そうすると何人かが吐き出される。我らの手にかかればこんなものだ。実に脆弱。見掛け倒しも甚だしい。だが、この人間と言う者、時に煙草なるものを口に銜え、プカプカ、煙を飲む。これがまた困る。体内の同志達がバタバタ死んで戦力がガタ落ちだ。実に迷惑千万。おかげで周囲は屍の山だ。何故この人間と言う生き物は毒を飲みたがるのだろうか。全く嫌になる。だから人間は毒舌な奴等ばかりなのだ。
その他
公開:18/02/02 10:40
更新:18/02/02 23:02
更新:18/02/02 23:02
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