繰り返される選択

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選択を間違えたことなどない。私が現世で言った最後の言葉が脳裏をよぎる。

閻魔大王だなんてよくある空想上の何かだと思っていたが、じゃあ、今自分が置かれている状況はなんだと自問自答する。

禍々しい空気は喉が受けつけず、登山をしている気分にさせる。吐く息は奇妙に臙脂色をしている。

辺りは何処を見ても何も見えない。暗いという概念ではない。ただ、死という現実だけで理性を保つ私がいる。

「二つだ」閻魔は唐突に喋った。何がだと聞き返すと私が選べる来世の選択だと言った。

「新しい人生。それか、死んだ日からやり直せる人生。さあ選べ」

私は即答で後者を選択した。閻魔の頷きと共に場面が現世に戻った。

恋人が横断歩道を渡った先にいる。

「選択を間違えたことはない」私はそう言いながら走り出した瞬間にトラックに轢かれた。

左手に握り締められた包丁を、心肺停止の状態でも私は放さなかったそうだ。
ホラー
公開:18/01/30 16:13
ホラー 選択 閻魔大王 現世 人生 恋人

Aya

我流でやっています。

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