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駅のホームで友達に声を掛けられた。
「なんでひとりで笑ってるの?」
なるほど、彼女は知らないのだなと教えてあげる。
「これ聴いてたの」
わたしは手にしたケースから粒をひとつ取りだして、彼女の耳に放りこむ。驚く彼女にわたしは言った。
「その粒には物語が閉じこめられてて。耳の中でシュワシュワ溶けて、いつでもどこでもお話を聞かせてくれるの。寝る前とか移動中とか、隙間時間で楽しめるわけ」
そして彼女は、その笑い話に耳を傾けはじめたのだった。
そのうち粒は改良されて、読みあげる声を自由に調整できるようにもなった。わたしが再現したのは、小さいころ、いつも枕元でお話を聞かせてくれていたおばあちゃんの声だった。
最近は寝付けない夜、わたしは耳に粒を入れ、おばあちゃんの語ってくれる物語の世界に浸っている。そんな日は遠い昔のおばあちゃんとの記憶もよみがえり、わたしは思い出に彩られた夢の中へと落ちていく。
「なんでひとりで笑ってるの?」
なるほど、彼女は知らないのだなと教えてあげる。
「これ聴いてたの」
わたしは手にしたケースから粒をひとつ取りだして、彼女の耳に放りこむ。驚く彼女にわたしは言った。
「その粒には物語が閉じこめられてて。耳の中でシュワシュワ溶けて、いつでもどこでもお話を聞かせてくれるの。寝る前とか移動中とか、隙間時間で楽しめるわけ」
そして彼女は、その笑い話に耳を傾けはじめたのだった。
そのうち粒は改良されて、読みあげる声を自由に調整できるようにもなった。わたしが再現したのは、小さいころ、いつも枕元でお話を聞かせてくれていたおばあちゃんの声だった。
最近は寝付けない夜、わたしは耳に粒を入れ、おばあちゃんの語ってくれる物語の世界に浸っている。そんな日は遠い昔のおばあちゃんとの記憶もよみがえり、わたしは思い出に彩られた夢の中へと落ちていく。
ファンタジー
公開:18/01/28 11:42
更新:18/01/28 11:44
更新:18/01/28 11:44
1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。現代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務める。また、全国各地で創作講座を開催するなど幅広く活動している。17年には400字作品の投稿サイト「ショートショートガーデン」を立ち上げ、さらなる普及に努めている。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など多数。
◆公式サイト:http://masatomotamaru.com/
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