オーディオ・ショートショート

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駅のホームで友達に声を掛けられた。
「なんでひとりで笑ってるの?」
なるほど、彼女は知らないのだなと教えてあげる。
「これ聴いてたの」
わたしは手にしたケースから粒をひとつ取りだして、彼女の耳に放りこむ。驚く彼女にわたしは言った。
「その粒には物語が閉じこめられてて。耳の中でシュワシュワ溶けて、いつでもどこでもお話を聞かせてくれるの。寝る前とか移動中とか、隙間時間で楽しめるわけ」
そして彼女は、その笑い話に耳を傾けはじめたのだった。

そのうち粒は改良されて、読みあげる声を自由に調整できるようにもなった。わたしが再現したのは、小さいころ、いつも枕元でお話を聞かせてくれていたおばあちゃんの声だった。

最近は寝付けない夜、わたしは耳に粒を入れ、おばあちゃんの語ってくれる物語の世界に浸っている。そんな日は遠い昔のおばあちゃんとの記憶もよみがえり、わたしは思い出に彩られた夢の中へと落ちていく。
ファンタジー
公開:18/01/28 11:42
更新:18/01/28 11:44

田丸雅智( 東京 )

1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。2011年、『物語のルミナリエ』に「桜」が掲載され作家デビュー。12年、樹立社ショートショートコンテストで「海酒」が最優秀賞受賞。「海酒」は、ピース・又吉直樹氏主演により短編映画化され、カンヌ国際映画祭などで上映された。15年からは自らが発起人となり立ちあがった「ショートショート大賞」において審査員長を務め、また、全国各地でショートショートの書き方講座を開催するなど、新世代ショートショートの旗手として幅広く活動している。著書に代表作『海色の壜』など多数。

◆公式サイト:http://masatomotamaru.com/

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